◆プロのメイクは、道具が違う◆

　メイクアップアーティストにお化粧をしてもらった時はキレイに仕上がったのに、自分でやるとうまくできない……。そんな経験はありませんか？　やはりプロのテクニックは違いますね。でも、実はプロは、使う道具も違うんです。　たとえばチークブラシひとつとっても、使用される天然毛はリス、黒ヤギ、馬のものなどさまざま。最高級品のリスの毛を使ったものは、ビロードのような触感でありながら、適度なハリやコシがあります。だから、頬紅が肌の上にふわりとのり、なめらかに広げることができ、さらに余分な粉をはらうのにも最適。最高のチークブラシには、江戸時代の職人たちが工夫を重ねて練り上げ、伝えてきた刷毛（はけ）を作る技術が受け継がれています。
　当店では、化粧ブラシだけでなく多種多様の刷毛（はけ）やブラシを取り扱っています。友禅染めに使う染色刷毛、漆器にうるしを塗るのに使う漆刷毛、見事な錦絵を刷りだす木版刷毛、ふすまを張る経師刷毛……。用途によって毛の素材を選び、毛先の形を考え、使い心地を追求し続けた江戸の職人の工夫と技術は今、何ミクロンの単位で精査を要求される工業用ブラシなどにも生かされています。
身近な小さな道具のなかに、江戸が息づいている――そんなお話を申し上げました。

刷毛・ブラシ
江戸屋
●中央区日本橋大伝馬町2-16
●03（3664）5671