「にんべん」当主・髙津伊兵衛さんがご紹介する「福徳神社 神幸祭」

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 本年2024年10月6日(日)に、日本橋のコレド室町の東側にある「福徳神社」で、2年に一度の神幸祭が執り行われます。

 福徳神社は9世紀後半の鎮座と伝わるこの地の鎮守様で、その昔は源義家や太田道灌、徳川家康などの名だたる武将の崇敬も集めていました。戦前までは「村社」という社格を有しており、現在は日本橋室町二丁目を氏子とする氏神様です。

 お社は、戦災や日本橋の再開発などで幾度か移りましたが、2014年(平成26年)に現在の新社殿が竣工してご遷座。翌年には隣接して福徳の森がつくられ、さらに2016年には三井不動産を始めとする地元企業や氏子で構成する芽吹会によって神輿が奉納されました。そして、その神輿に五穀をつかさどる御祭神・倉稲魂命(うかのみたまのみこと)をお乗せして氏子町内をめぐる神幸祭が始まりました。神輿は、宮本卯之助商店謹製。日本橋の象徴である麒麟(きりん)像も彫り込まれた勇壮華麗な神輿です。

 ところで、室町二丁目の町域は、おおまかにいえば北は本町通り、南は江戸桜通り、東はあじさい通り、西は日銀通りまでという中央通りをはさんで東西に広がる小さなエリアです。ちなみに、周囲はぐるりと神田神社の氏子町。ですから、福徳神社の神幸祭は途中休憩を3度設けても2時間ほどの巡行です。しかし、我が町会には不動産・薬・証券・食品など名だたる企業が入っていますので、担ぎ手は400人以上。社名の入った祭半纏を着た人たちが代わるがわる神輿を担ぎ、周囲は掛け声を揃え、祭りを盛り立てながら練り歩きます。とりわけ、中央通りの巡行ではお買い物や観光のお客様の歓声も加わって、いよいよ華やぎます。

 祭りでは、準備の日々も含めて町会の人々の神社への愛着が日に日に深くなっていくのを肌で感じます。もちろん、神幸祭は、私にとっても1年で一番楽しい日。大都会・東京の、高層ビルの谷間のオアシスのような神社の祭りに、一日酔いしれます。

 福徳神社は江戸時代には「富くじ」興行が許されていたお社で、幸福と金運のご利益があることでも広く知られてきました。ぜひ、2年に一度の神幸祭をご覧になりに日本橋にお越しください。お待ちしています。

(浮世絵のご説明)
『豊年萬作之図』、五風亭貞虎、福徳神社蔵。天保年間(1830~43)の作と推定される3枚1図の農耕図。教材としても楽しまれた錦絵の一つだが、五穀豊穣という信仰的意味合いが背景にある。また、江戸幕府が開かれる前、田園が広がっていたこの地をほうふつさせる絵でもある。中央上部の右側に「福徳稲荷社」の鳥居と社殿が描かれている。