【第十一回目】
銀座 越後屋:呉服屋さんは着物の「セレクトショップ」です。
まずはウインドー・ショッピングから。じっくりご覧になってください。展示されている着物や帯が、お客様が考えているものとは種類が違ったり、着る年代層が違ったりするかもしれませんが、それはこの際、気にしないでいただいて。
たとえば小さな柄にでも、あるいは全体の雰囲気にでも「きれい」「かわいい」「素敵」と思うものがありますか? ご自身のセンスと合いますか?……。実は、これが大事。つまり“呉服屋さん”というのは、セレクトショップなんです。そう考えれば、あとは洋服のセレクトショップでお買い物をするのと同じです。発掘する楽しさはもちろんのこと、互いに感性を磨きあうようなお付き合いだってできるでしょう。
ちなみに、これは私の感想ですが、この店の着物は淡いきれいな色合いのものが多いのですが、ただ優しいだけではなくて、どこかにキリリと理知的な色柄が入っている……そんな感じがします。江戸好み、というよりも銀座越後屋の好みというべきなんでしょうね。銀座の気品、華やかさ、しとやかさ、あでやかさ、清楚さ……あ~、着物のイメージを言葉で表現するのはとっても大変!
あとは、どうぞ皆さんの感性でご覧になっていってください。
また、こういうものこそ、最初にいいものを見ていただきたいという気持ちもあります。不思議なことに、着物や工芸品などの日本の美は、見るたびに目が肥えていくのです。だからこそ最初が肝心。最近「自分へのご褒美に」と着物を買う方が増えているようですが、1枚の着物を買うまでに得る知識や、日本の美や技と出会いこそが「贅沢」かもしれませんね。
老舗は、創業からの長い時間をつむぎながら、未来の時間をも保証しています。着物とも老舗とも、ゆっくりおつきあいしていく――そんなつもりで、暖簾をくぐってみてください。
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