【千疋屋総本店】
◆西郷どんと西瓜◆
 当店の創業は天保5年(1834)。初代が現在の埼玉県越谷市千疋から上京、日本橋近くで果物や蔬菜を売る店を開いたのが始まりです。そして、飛躍をとげたのが2代目の時代。妻となって嫁いできた「むら」が駒形の大店の娘で、その縁から一流料亭・八百善に出入りするようになり、さらに、そこに集まる各界の著名人、粋人からもお引き立てを賜わるようになったのです。
そんな顧客の一人に、あの西郷隆盛公がいました。店が薩摩屋敷に近いこともあって、むらはしばしば「おっかあ、でっかな西瓜持ってこいよ」と、親しく声をかけられたといいます。
西瓜はアフリカ原産で、日本にもたらされた年代は不明ですが、寛永年間(1624~44)に、琉球から薩摩に伝えられたのが始まりともいわれています。西郷さんにとっては、故郷を思い出す果物だったのかもしれません。
明治6年、ご存知のとおり西郷さんは失意のうちに江戸を去ることになります。帰郷の数日前、むらは西郷さんに「おっかあに屋敷をあげようか」と冗談ともつかぬ話をされたという話も伝わっております。
さて、その日、むらが最後にお届けした果物は、なんだったのでしょう。頃は10月。西瓜でなかったことはまず確かだと思うのですが……。
果物
千疋屋総本店
●中央区日本橋室町2-1-2
(地下鉄三越前駅A8番出口すぐ)
●03-3241-8818(代)

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